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踊る!ディスコ室町のギター

今週読んだ本

電車に乗っているあいだによく本を読むが、それ用に持っていく本を選ぶのは意外と難しい。ガタゴト揺れたりするのであんまり難しい本だとうまく読み進めていくことができないし、長編だとコマギレに読んでいくのがもどかしかったりする。

最近電車では椎名誠の本を読んでいるが、この人の本はそういう意味でちょうどいい。特に週刊誌での連載をまとめたような本はちょっとずつ読んでは一息つけるし、好きなところで読み終わることができる(逆に家で集中して読むには物足りない)。

週刊誌を読んでいる人って今ではほとんど見かけないけど、かつては新幹線の中とか病院の待合とか、そういう場面で読まれていたんだろうなあ。かつては多くの人がスマホをガン見する代わりにこういうプロの文章に接していたのかなーと思うといい時代だなと思う。



◯男たちの真剣おもしろ話(椎名誠
椎名誠の対談集。対談の相手には80年代当時のビッグネームが呼ばれているが、よく知らない人が多い。かろうじて知っている山下洋輔東海林さだおとの話はおもしろく読んだ。山下洋輔は「ジャズやブラジルのカーニバルは、椎名さんたちが焚き火でウオーってなっているのと同じ」というようなことを言っていた。おれもウオーってなる焚き火またはライブがしたいなあ。ライブハウスでウオーってなることがかなり減っている気がする。


◯親指はなぜ太いのか(島泰三
何年か前に同じ著者の『魚食の人類史』を読んでめちゃくちゃおもしろかったので、他の著作をまとめ買いして積んでいた。
しかしこの本では『魚食〜』のような興奮はなくて、固有名詞が延々並んでいたりしてちょっと読み進めていくのがつらく、途中でやめてしまった。『魚食〜』はNHKブックス、『親指〜』は中公新書なので、出版社ごとのノリの違いという感じもする。
ちなみに親指がなぜ太いのか(人間の手がなんでこういう形なのか)というと、石を握るようになったかららしい。石な〜


◯風景進化論(椎名誠
写真雑誌の連載をまとめた本。椎名誠をめちゃくちゃ読んでいるけど、他の本に比べてなんとなくしっとりした筆致になっている気がする。「愛と闘魂の安全三角地帯」と題されたエッセイがよくて、中央線の満員電車で彼女を守るためにドア横に陣取って踏ん張る男と、それに対して邪魔だと文句をつけるおじさんの戦いを描写しているのだけど、そういうちょっとした事件にフォーカスしているのはけっこう珍しいし、それを見守りながら(こいつはいかんぞ……)(いいぞいいぞ)とか言ってる椎名氏の野次馬的な目線もいい。


アメリカ紀行(千葉雅也)
千葉雅也氏の旅行記。1年くらい前に読んだときはピンとこなかったけど久しぶりに開いたらスルスル読めた。How are you ? とか You too ! とか言う英語圏は二人称文化、逆に電車で「急ブレーキがかかりましたことをお詫びします」とか言ってる日本では人称の感覚が希薄、という話が序盤と終盤に配置されていたのが印象的。タイトルに「紀行」とついているけど、全体的にあっさり淡々としているのがちょっと不思議な感じ。