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踊る!ディスコ室町のギター

今週読んだ本

「今週読んだ本」で1年間毎週ブログを書いてみようと思って12月から始めていたけど、年末年始でバタバタしてたらいきなりストップしてしまっていた。大変な週はスキップしてもいいことにして続けたい。

改めて年末以降に読んだ本を振り返ってみたら、海外の生活にまつわる本をよく読んでいた。日本で30年近く生きてきたけど、他所の暮らしはどんな感じなんだ? というのが最近の関心。


◯パッキパキ北京(綿矢りさ
綿矢りさ新刊。本人が中国滞在取材に行ったらしく、コロナ禍の中国の描写が生々しい。でもそれが小説の舞台設定としてうまく機能しているかというと、そうでもないような気もしてしまった。エッセイとして読みたい感じというか。
でも文章にはドライブ感があって、特に後半にかけては楽しく読んだ。著者も書いているうちにだんだんノッてきたんじゃないか。

◯シベリアのビートルズ(多田麻美)
グーグルマップでモンゴルのあたりを見ようとするとき国境の北にある「イルクーツク」という地名がたびたび目に入る。どんなところなんだろうとなんとなく関心を持っていた。この本はそのイルクーツク在住の著者が書いたもので、現地で出会った夫やその友達のエピソードが紹介されている。
ビートルズが流行したときにグッズが自由に手に入らなかったので海賊版のポスターを借りて一週間ずつ自分の部屋に貼ったとか、アメリカのヒット曲が意外と知られてないとか、ロシアならではの話がおもしろい。それに比べるとやっぱり自分たちは「西側」にいるんだな。
多田さんのブログは以前から購読していたけど、はてなブログはロシア政府のブロック対象ではないのかな。いつかイルクーツクに行ってみたい。
lecok.hatenablog.com

◯インドでわしも考えた(椎名誠
「インドには空中浮遊で地上3メートルに浮いてしまうヨガの達人がいるらしい」とか言ってヨガの師匠を訪ね歩いていて、本気じゃないにしてもアホすぎる。でも40年前にインドに対して「もしかして……」と思う余地があったとすると羨ましくもある。いつも旅に付き合ってくれる仲間がいてそれもちょっと羨ましい。カメラマン・山本皓一による写真もいい。

◯定本 岳物語椎名誠
岳物語は何度か読んでいたけど、この「定本」には、作中に登場する岳少年まさに本人(渡辺岳さん)によるあとがきが収録されていて、それ目当てで読んだ。そのあとがきをかいつまんでいうと「岳」本人としては自分が題材となったこの私小説を「憎んでいた」「受け入れられない」そうである。自分がその立場に置かれることを想像すると当然そうなる。この本を何度も読んでいる読者としては罪悪感すら感じる話である。
自分もWebの記事やZINEに書く文章の中に自分以外の誰かを登場させることがあって、どうしてもそのことについて考えてしまう。家族を含む他人について描写することはそれ自体に暴力性をはらんでいる。だからといってじゃあなにも書きませんというわけにもいかない……というのは作家のエゴであるが、正直なところ自分は「それでも書く」を選ぶと思う。程度の問題なのかなあ。許してもらえるものを書くしかないのかな。

◯韓国語のしくみ《新版》(増田忠幸)
「新書みたいにスラスラ読める!文法用語にたよらない画期的な入門書」とうたわれているシリーズ。「モンゴル語のしくみ」を読んだとき、勉強を始める前にだいたいの全体像がわかって便利だったような気がして、韓国語版も読んでみた。
そんなに込み入った話は出てこないけど、duolingoをバンバン進めているだけではわからなかったことが解決したりしてうれしい。「お姉さん」という意味の単語が「ヌナ」「オンニ」の二種類あるが、どう使い分けるのか? とか(男性が言うときはヌナ、女性が言うときはオンニらしい)。
内容と関係ないところでは、文章の作り方がなんとなくソフトウェアエンジニアのそれに近いような気がした。言語を正確に操ろうとするとこうなるのか。

◯万物の黎明(デヴィッド・ウェングロウ、デヴィッド・グレーバー)
話題の分厚い本。正月からちょっとずつ読んでいるがとにかく分厚いのでちびちび読み進めている。この本だけは読み終わった章について書いていってもいいかも。