モンゴル北部、ロシアとの国境付近でトナカイを飼っている人たちがいるエリアに行ってきた。
集落で飼われているトナカイたちは適当な時間になったら勝手に山にエサを食べに行って、また勝手に戻ってくるらしい。だから村の人たちはトナが戻ってきているときに乳をしぼるくらいで、あとはそんなにやることもなさそうに見える。村のおじさんたちは昼間からゴロゴロしていて、観光客と村の子どもが一緒にバレーボールをするのをぼんやり眺めていた。
ウマやヒツジ、ヤギを飼っている遊牧民は朝っぱらから放牧やら乳搾りやら乳製品づくりやらで忙しくしているので、それを考えると驚異的なゴロゴロ具合だ。もちろん冬はマイナス60度になったりして厳しい環境だろうが、住み続ける理由があるのもそれなりによくわかった気がする。
村はのんびりしていてよかったが、そこにたどり着くまではとにかく大変だった。空港からオフロードを10時間くらい車で走って、そこから馬に乗り換えてさらに6時間。馬で進むのは山の中を抜けていくルートで、山肌から霧がゆっくり降りてきて視界が悪くなるとなかなか恐怖感があった。
疲れ果てているときに白いモヤの中からいきなりトナカイが現れたのはファンタジーのようだった。もう東京-京都間をハイエースで往復したくらいで泣き言を言うのはやめようと思った。