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踊る!ディスコ室町のギター

体調が悪くなる映画(『夜を走る』)

郊外のスクラップ工場で働くふたりの男。

ひとりは40 歳を過ぎて独身、不器用な性格が災いして嫌味な上司から目の敵にされている秋本。

ひとりは妻子との暮らしに飽き足らず、気ままに楽しみながら要領よく世の中を渡ってきた谷口。

退屈な、それでいて平穏な毎日を過ごしてきたふたり。しかし、ある夜の出来事をきっかけに、彼らの運命は大きく揺らぎ始める……。

使いものにならなくなった部品はいとも簡単に交換され、何事もなかったようにぐるぐる廻り続ける社会。悪が悪を生み、嘘に嘘が塗り重なり、弱いものたちがさらに弱いものを叩く。この無情の世界をどう生きていったらいいのだろうか─そんな答えなき問いに真正面から立ち向かい、偏在する矛盾と対立を丸ごと呑み込みながら、それでも尚、救済の可能性、解放への道標を、規格外のスケールで探し求める映画が誕生した。

速度と興奮に満ちたサスペンス、一寸先は予想もつかぬ怒涛の展開、そのあいまに漲る切々たるリリシズムと無骨なユーモア─目眩にも似た驚きを与えながら、観る者を異次元の地平へと連れ去る恐るべき怪物的映画、それがこの『夜を走る』である。
映画『夜を走る』公式サイト


映画『夜を走る』。これはヤバい!という評判を目にしたので出町座で見たら、たしかにヤバかった。

サスペンスというか、なんか悪いことが起こりそうだな〜という緊張感を常に感じながら、実際にストーリーが進んでいくと、思ってるのと若干ちがう、斜め上の最悪のことが起こる。上映時間125分ずっとそんな調子なので大変疲れた。帰ってきてメシ食って風呂に入った今でも胃がキリキリ痛い。

みんな明確な悪モノじゃないのに、「コストは大きいが今やるべきこと」を後回しにし続けた結果、どんどんメチャクチャになっていく。奇しくも今の世の中と符号するような展開もあって、暗い気持ちになった。人間や社会に対する信用が下ったし、帰りの夜道でもなんか悪いことが起きそうで怖かった。


暗い気持ちにはなったけど、だから嫌な映画かというとそうでもない。上映中はスクリーンにのめり込んでしまったし、このあとどうなるの??の連続で、映画の視聴体験としては大変おもしろかった。体調が悪くなるほど没入してしまうって、いい映画じゃないとできないことだ。怪作です。