やっとの思いで仕事を納めたかと思ったら、もうサンガニチも終わりである。あけましておめでとうございます。
年末年始は、なんやかんや思うところもありながらだったけど、結局は大阪の実家に帰った。
15歳になった柴犬がボケてしまって夜鳴き・粗相が大変だった以外は、やっぱり居心地がよくて、久しぶりに仕事とかコロナのことを心配せず、リラックスして過ごすことができたような気がする。
さらに今年は初詣や親戚への挨拶も省略して引きこもっていたので、読書が捗りまくった。毎年、本を持って帰っては読まずにUターンしているが、今年は3冊読めました。
長らくブログも更新してなかったので*1、リハビリがてら記録しておこうと思います。
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プロ棋士の先崎学九段が、うつ病を患ってから復帰するまを綴った手記。
去年将棋にハマったにわかファンながら、「3月のライオン」のコラムやYouTubeで見る映像などから、先崎九段には”豪快で明るい人”みたいなイメージがあった。
学生時代に心理学を学んだので、この病気に性格は関係ないとわかっているはずだけど、それでも”豪快で明るい人”がうつ病になって苦しんでしまう様子は、読んでいて驚きと、苦しさがあった。脳機能が普段と変わってしまって、いつもなら1秒で解いてしまう7手詰めの詰将棋すら解けなくなったという具体的なエピソードが衝撃だ。
エピソードは重たくてつらいけど、先崎九段の文章は軽快で、最後は病気も快方にむかうので、読後感はさわやかだった。
年末にNHKでドラマになっていたらしく(羽生役のナイツ土屋が似てて笑った)*2、これもチェックしたい。
○ぼくは猟師になった(千松信也)
去年の後半、デイリーポータルZでこーだいさんの記事を読んで、急に狩猟が身近になった。
本題はデカい肉を焼いて食べることにあるんだけど(素晴らしい記事だ)、京都でも=都市に近い山でも、シカって獲っていいんだ!と思って、自分のなかでは発見だった。しかも簡単に獲れるらしい。
僕が住んでいるマンションの裏山にもシカがたくさんいる。たまに見かけては、かわいいなーくらいに思っていたけど、そうか、あいつら食えるのか。まじか。
それで京都の狩猟事情について調べているうち、必然的にたどり着いたのが千松さんだった。
大学寮でのシカ肉パーティー、会社員として働きながらの猟師、京都市内で獲るシカやイノシシ…、自分にとっては、どれも「そんなんアリか!」と思ってしまうような内容で、目からウロコを落としながら読んだ。
モンゴルでは遊牧民が羊を屠って解体するまでを見学したけど、あれって自分にもできることなのか。
ちょっとまだ覚悟は決まりきっていないけど、がぜん、自分もシカやイノシシを獲ってみたいと思ったのだった。
○彗星の孤独(寺尾紗穂)
シンガーソングライター・寺尾紗穂さんのエッセイ集。
「楕円の夢」や「北へ向かう」を聴いて音楽のファンだったのだけど、こないだ配信で見た七尾旅人とのツーマンライブでMCを聞いて、文章も読んでみたいと思って手にとった。
内容は、父や子供とのパーソナルな話題から戦争や差別、貧困の問題まで幅広く…と、書いてみてから、「社会問題」と一息に括られてしまいそうなそれぞれに対しても、全部自分ごととして書かれていたことに気がついた。戦争みたいな大きすぎて全体を把握しきれないようなものに関しても、寺尾さんの目を通して、ひとつひとつの出来事からなにかを感じ取ることができるのだった。読んでいて、丸くなっていた背筋が伸びた。
なかでも、大きな政治と小さな個人の話が交差する「沖縄 和して同ぜず」と題された短い章が頭に残った。
米軍関係の仕事をしていて、その会社のアメリカ人社長とも仲がよかった(かもしれない)ミュージシャンが、それでも自分のミュージックビデオに星条旗を皮肉めいて登場させるのだ、というエピソードとともに「日々を生きながら表現していくというのはそういうことだ、とも思うのだ」と結ばれていて、ハッとした。
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なんか並べて見ると、あまり明るいとは言えない本ばかりにも見えるけど、実際に読んでみるとそんなことはなくて、久しぶりに一気に活字を摂取したこともあり、たいへん元気になった気分です。
2021年、まずは年末にやっつけきれなかった仕事と格闘することになりそうだけど、とりあえずは今年もぼちぼち頑張ろうかと思う。