songdelay

踊る!ディスコ室町のギター

いい日に生きて、あの感じになろうね(配信ライブ「LIVEWIRE」/ 中村佳穂)

 

今となっては思い出すだけでも一苦労だが、遠い昔、人々は生演奏の音楽で公演を行い、大勢の観客がそれを見て楽しんでいた。

 

と、仰々しく書いてみても全然冗談に聞こえないくらいには変わってしまった音楽業界だが、新型ウイルスが世の中を変えてしまう直前、僕が最後に生で見たコンサートのひとつが中村佳穂のサンケイホール公演だった。

 

19歳のときに知り合ってから何度となく見てきた中村佳穂のライブだが、毎回びっくりするような仕掛けがある。

それは新しい曲だったり、一緒に演奏するメンバーだったり、アレンジだったりするのだけど、とにかく何度みても新鮮に驚かされてしまう。同世代のバンドマン*1としては、圧倒されすぎてちょっと落ち込んでしまうくらいだ。

 

 

そして、コロナ禍の配信ライブもやっぱりすごかった。

ライブ冒頭での語り、「頭のなかにあるものは 見せなきゃ誰もわからない」と言っていたけど、本当に中村佳穂のイメージを見せてもらったようだ。

全てはここから始まる

頭のなかにあるものは ちゃんと見せなきゃ

誰もわからない なんて

思ったから ピアノを弾いたっけな

 

語りのあと、「口うつしロマンス」「きっとね!」と続く。

いつも通りにガシガシと弾くピアノだけど、手元をこんな間近で見られるのは配信ならではだな。アップライトの鏡面に映る鍵盤と10本の指が波のよう。

f:id:makoto1410:20200912235752p:plain

f:id:makoto1410:20200912235706p:plain

f:id:makoto1410:20200912235723p:plain

この人はよく膝を立ててピアノを弾いている

 

 

「Rukakan Town」「SHE'S GONE」に続いて、「シャロン」。この曲は久しぶりに聴いた。

知り合った頃から歌っていた曲で、最初の自主制作盤に入っていた曲だ。

この曲を歌うとき、いつも和やかな表情がさらに優しくなるような気がしている。配信でもそれは変わらなかった。

f:id:makoto1410:20200913002317p:plain

f:id:makoto1410:20200913002323p:plain

 

 

優しい2曲と対照的だったのが「You may they」。

それまでと打って変わって、強いタッチのピアノと息切れするほどの早口で捲し立てる。演奏後、疲れた!と漏らすほど。笑

何度も繰り返される「いい日に生きて、あの感じになろうね」という歌詞が頭に響く。

そうか、いい日に生きないといけないんだった!と思い出した。

f:id:makoto1410:20200913003009p:plain

全部フォルテ!

 

 

ここまでも十分良かったが、今回のライブの仕掛けはこのあとに用意されていた。

冒頭と同じように語りが入って、ここからが第二部の始まりということか。

音楽というものは 音楽というものは

自分から寄っていかなければ 届かないもの

音楽というものは 音楽というものは すべては

好きになるのも一苦労 嫌いになるのも一苦労

変わらないでいる価値 変わっていく価値 

価値観は押しつけないで 勝ち方にピンと来たいのさ

 

 

観葉植物の葉越し、おもむろにイヤホンをつけると、ストリングスが鳴り始める。

あれ、一人じゃなかったのか?と混乱しているうちにドラムやギターが入ってきて、完全にバンドサウンドに。

キメやユニゾンを合わせるときの楽しそうな感じ、バンドのアンサンブルはこうでなくては!

f:id:makoto1410:20200913004707p:plain

f:id:makoto1410:20200913004525p:plain

f:id:makoto1410:20200913005253p:plain



 

突然のバンドサウンドがいったんブレイクすると、今度はピアノを離れてハンドマイクで動き回る。

このあたりから映像に不思議なオブジェクトが登場して、現実とフィクションの境目があいまいだ。

f:id:makoto1410:20200913005543p:plain

f:id:makoto1410:20200913005909p:plain



西田修大のガットギターに乗せられているうち、演奏はずいずい進んでついにエンディングへ。

特に後半は演奏や映像の展開が読めず、ドキドキしているうちに終わってしまった。

 

 

f:id:makoto1410:20200912235542p:plain

f:id:makoto1410:20200912235523p:plain

f:id:makoto1410:20200912235506p:plain

f:id:makoto1410:20200912235451p:plain

Love You! とのことです

 

ワンカットで一度も途切れない映像は、長いミュージックビデオを見ているようで、しかし同時に予測できないワクワク感はまさしくライブのそれだった。不思議な映像体験だ。

 

思えば2月に見た公演のタイトルは「うたのげんざいち」だったが、今回の配信ライブでも、その現在地をビンビンに感じられて嬉しかった。

  

小さいライブハウスで一緒に演奏していた頃から、佳穂さんの持っている魅力と、人を惹きつける引力は変わらないように思う。

こんなすごい映像を世に出したら、またその引力が人を呼んで、もっとすごいことになってしまうのだろう。

 

いつもは圧倒的すぎてちょっと凹むくらいの気持ちになるけど、今日は終始、そのすごさが嬉しかった。

 

・・・・・・・

 

普通だったら、こういう感想とかライブレポートというものを読んでみてすごく良さそうに思っても、終わったライブを見にいくことはできない。だが、今回は配信ライブだ。

9月22日(火)までチケット購入・視聴が可能とのことなので、まだ見ていない人は、ぜひその目で目撃してください。

筆舌に尽くしがたいとはまさにこのことで、ひっくり返るくらいすごい映像なので絶対見た方がいいです。

 

 

 

 

f:id:makoto1410:20200913013206j:plain

「小さいライブハウスで一緒に演奏していた」頃。今はなきVOXhall…!

 

 

*1:というとおこがましいのですが