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踊る!ディスコ室町のギター

わたしを空腹にしないほうがいい(くどうれいん)

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”モリオカが生んだアンファン・テリブル”(版元HPの紹介文より)こと、くどうれいんのエッセイ。

 

John Gastro氏がTwitterで紹介しているのを見て気になっていたけど、どこで買えばいいのかわからないままになってしまったのだった。2〜3年前のことだと思うけど、タイトルが強烈なので覚えていた。

新作発売の話題を見て思い出したのでBOOKNERDのHPで注文すると、手書きのレターパックで届いた。

 

二色刷りの小さな冊子。ISBNコードがついていないシンプルな装丁が力強い。

ページをめくってみると、書き出しから最高だ。

 

6月1日 芍薬は号泣するやうに散る

わたしを空腹にしないほうがいい。もういい大人なのにお腹がすくとあからさまにむっとして怒り出したり、突然悲しくなってめそめそしたりしてしまう。昼食に訪れたお店が混んでいると友人が『まずい。鬼が来るぞ』とわたしの顔色を窺ってはらはらしているので、鬼じゃない!と叱る。ほら、もうこうしてすでに怒っている。さらに、お腹がすくとわたしのお腹は強い雷のように鳴ってしまう。しかもときどきは人の言葉のような音で。この間は『東急ハンズ』って言ったんですよ、ほんとうです、信じて。

 

絶対憎めない食いしん坊だとわかる。ていうかタイトルの芍薬ってなんだ。知らなかったし読めなかった。1ページ目から強めのジャブを食らったような気分に(勝手に)なった。

 

喜んだり落ち込んだりするたびに、ご飯を食べることによってそれを増幅したり和らげたりする。そういうふうに自分を喜ばせられることの数が多い方が人生は豊かなんだろう。自分で作る食事で人生をドライブできるなら、なおさら経済的だし簡単だ。

僕も大学に入ってから一人暮らしを始めて、ずっと自分の厨(くりや。これも読めなかった)に向かい続けてきた。筆者よりだいぶレパートリーは少ないと思うけど、そうやって一人で自炊し続けている日々をなんとなく肯定したくなったし、これからもうまいもん作っていこう、とぼんやり思う。最近は作業的になりつつあるけど、もうちょっと自分をエンパワメントできるようなものも作りたい。

 

 

読み終わって、ちくしょう…いい仕事してるな…と思いながら巻末をみると、筆者は1994年生まれ、とある。同い年だ。なぜか悔しい(同い年が活躍しているのを見ると勝手に悔しくなってしまう。僕だけ?)。

これから読む新作「うたうおばけ」も良かったらどうしよう、と思っている。

たぶんめっちゃ良いんだろう。

 

 

うたうおばけ

うたうおばけ

  • 作者:くどうれいん
  • 発売日: 2020/04/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

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